ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

TOEFL、このイマイマシキ難物

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筆者は留学時代、ちょうど安倍政権TOEFLを日本国内の全大学の入学試験に義務付ける方針を打ち出したタイミングであったこともあり、エズラボーゲル先生の私塾や、他の日本人留学生の方との会話の中で英語試験TOEFLについて、かなり多く議論させて頂いた。

TOEFLは欧米大学への入学の際に、非ネイティブに課せられる試験で、歴史は古く何十年も続いている試験である。一方で、2005年からTOEFL ibt (internet based test)という最新の試験形態に変更されてからは、試験の難度が著しく高くなった(と言われている)試験である。筆者を含めた純国産日本人の受験生の中には、資源ナショナリズムに似た「言語ナショナリズム」を抱いた人も多かったのではないかと思う。

 

欧米のトップスクールと呼ばれる学校に入学するためには、このTOEFL ibt で100~110点ぐらいを出す必要がある。ちなみに満点は120点である。多くの日本人は、英語試験のベンチマークは大学受験か、TOEICのはずなので、初めてTOEFL ibt 試験問題を開いた瞬間の難度のギャップに絶望感を覚える人も少なくないだろう。就職活動で「英語ができる大学生」のTOEIC目安点が730点とのことなのだが、両者の差は高尾山とエベレストぐらいは違うと感じる。

安倍政権が「TOEFL大学生全員必須」政策を打ち出してから、しばらくは熱い議論が続いた。「全員に必要か?」、「いまの高校教育との比較で、現実的か」、「TOEFL以外にも良い試験はある」など、さまざまな意見が出され、日本のメディアを賑わせた。

 

筆者がボストンで意見を伺った他の日本人留学生の方々の意見の多くは、TOEFL ibtは非常に巧く作りこまれており、Speaking、Writingも含めた実践的な英語力のレベルを測定する試験としては非常にクオリティが高いというものであった。但し、現行の日本の英語教育のクオリティを考えると、難度が高過ぎるため、日本人に「全員必須」が妥当な判断かどうかは意見が分かれていた。

確かにTOEFL ibtの構成は、本当に良く作られた試験であると感じている。良い試験とは高得点を出すことが難しいだけでなく、試験勉強を通じて「ネイティブ度」が高められる試験であると考えると、TOEFL ibtは筆者が見た中では最も良い言語試験であると思う。

結局、留学した後に、「ハーバードの優等生達」で書いたようなネイティブ学生との競争が待っていることを考えると、単に「苦労の先取り」をしているに過ぎないとも言え、「入学後に役に立たない」試験勉強というロスがない分、やっている最中は忌々しいと感じながらも、克服した後振り返ると意味のある苦労だったと感じられる。

 

筆者が伺った他の留学生の方の意見で面白かったものは、日本人は試験マニアであるから、目標(スコア)が定まり、課題を与えられれば、あらゆる手段で工夫を考え、なんとしても結果を出そうとする能力が高い、というものである。明治の商社マン安川雄之助氏の言葉を借りれば、「国民性として知力、器用さ、精神統一の特有性(集中力)」ということになると思う。

いま時点では、イマイマシキ難物と感じるTOEFLも、非常にクオリティが高いという前提で考えれば、いずれは日本人がその国民性をいかんなく発揮して、ハイスコアを叩き出し、その結果日本人の「真の英語力」を飛躍的に向上させる契機となるかも知れない。

そう考えると、実はこの難度の高い英語の試験は、日本にとってのチャンスになると感じている。

 

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