ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

純粋ドメスティックが考えるグローバル人材(1)

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「グローバル人材」という言葉が日本で流行している。ネットで検索しても「グローバル人材とはなにか?」や、「大学や企業はどのようにグローバル人材を育成するか?」という記事が山のように出てくる。

これまでの投稿をご覧頂いた方は薄々感じられていると思うものの、筆者は千葉県の出身で、地元の公立小学校、公立中学校、県立高校を卒業し、国立大学を出て、一般的な日本人大学生の就職活動を経て商社に入社した俗に言う「純粋ドメスティック出身者」(以下純ドメと呼称)。

特筆して英語が得意ということもなく、むしろ受験時代は英語が最も苦手、古き良き時代の就職活動ではTOEICの点数を空欄で提出したことも憶えている。商社に入社した後は、自分自身が希望したこともあり、ほぼ一貫して海外ビジネスを担当させて頂く機会に恵まれ、米中での数年に渡る常駐勤務を経て、アメリカに留学し、卒業後はハーバード大学の研究に中国現地で取り組んでいる。

「グローバル人材とは?」というウェブサイトが乱立していることからも、その定義は定まっていないように感じる。一方で、海外ビジネス、ひいては日本の将来を考えていく上で、とても重要な論点であるとも思う。

三井物産筆頭常務 安川雄之助の生涯」でご紹介した通り、あるいはSONY創業者盛田昭夫氏の「MADE IN JAPAN」を読んでも、資源もなく国土も限られている日本は、これまで貿易と海外ビジネスで立国してきた経緯があり、いま自分が豊かな生活を享受できているのも、明治維新以来の勇気ある先輩方の努力と犠牲の上に成り立っていると痛感する。

これはかなり壮大なテーマなので、自分の立場では手に余る感もあるものの、自分自身がかなり純度の高い純ドメであることも踏まえて、筆者自身が見てきたものや感じてきたことをご紹介し、グローバル人材を考えて頂くひとつのサンプルとして、以下何回かに分けて投稿していきたい。



(1) 英語力(語学力)にどう立ち向かうか?

前述のとおり、グローバル人材の定義は不明瞭で、こと大学や企業での教育ということになると、対象年齢もシニアのCEOクラスから若手まで幅広く、また分野もビジネスだけでなく技術開発や国際政治など幅広く想定されるが、おそらく共通しているのは「海外で勝てる日本人」ということになると考えている。

筆者の守備範囲である若手のグローバル競争という点に限定して話を進めていくと、まず避けて通れないのが英語力(語学力)。海外ビジネスと一言でいっても、実際は海外で他の日本企業にサービスを提供するというケースも多く、その場合は国内と同じく「日本人の顧客が満足する」サービスを提供するという目標となるため、ここでの検討対象から外したい。他方で、外国人に外国でサービスや商品を販売している最前線部隊について考えれば、英語力(語学力)の必要性はおそらく議論の余地がないと思う。

筆者自身も、「体験的TOEFL(英語)学習法」や、「ハーバードの最強語学プログラム」の投稿でご紹介した通り、純ドメとしてかなり苦労を重ねた経験があるので、語学を避けて通りたい気持ちに非常に共感する反面、耳触りの良い言葉を排除して、リアリティに迫れば、やはり語学力は不可欠ではないかと感じている。むしろ話せない、書けない状態でなんとか竹ヤリで戦おうとするよりは、日本人の勤勉なる精神力をもって、この難題に正面から立ち向かうのが筋ではないかと考えている。


自分自身の実体験から、ひとつ突破口として考えているのが、SpeakingをWritingで補うという方法。現行のTOEFLが顕著な例となるが、筆者が聞いた限り純ドメ出身者のほとんどはWritingの点数が、Speakingよりも圧倒的に高い。「沈黙は金」という日本の文化や、日本語特有の母音、子音の数が少ないこともあり、外国語のSpeakingは日本人にとっては最大の障壁となっている。

筆者は仕事でも、ハーバードでの生活でも、できる限り一発勝負のSpeaking頼みのシチュエーションを避けてきた。プレゼンの時には、聞かれる方が、他外国人の資料とのクオリティ差に気が付くような資料の作成を少なくとも心掛けてきたし、外国人の取引先やハーバードの教授と面談する際には、事前にミーティングの要点をメールし、場合によっては面談の中でこちらから話す内容を詳細に記載したファイルを添付して、一発勝負のSpeakingで万が一失敗したとしても、先方が自分の意図したことをできる限り汲み取って貰えるセーフティーネットを用意した上で本番に臨んできた。これはとても手間が掛かる反面、SpeakingをWritingで補うことができ、また聞く側も安心して、あまり上手でない日本人の外国語を聞くことができるのではないかと感じている。

 

以下、「純粋ドメスティックが考えるグローバル人材(2)」へ続く。 

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