ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (1)

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ここは中国は浙江省の温州市。今回は筆者自身の研究をご紹介させて頂きます。

秋になったにも関わらず照りつける太陽、気温は30度を超えている。ジャケットを脱いでも、シャツに染み透るほどの汗。周囲で話される言葉は、中国語の普通語ではなく、地元の温州語、同じ漢字を使っていながら、発音は全く異なる。こちらが普通語で話掛ければ理解はできるが、地元民同士が話をしていると、全く何を話しているかは分からない。

温州は、上海から南に新幹線で約5時間の場所に位置している海沿いの街。「勉強になるかもよ、一緒に来ない?」と誘った上海人の大学生を、現地語が通じない時のもしものための通訳として同行して連れて行ったが、彼も到着してみたら「温州語はほとんど分かりません、ごめんなさい」とのこと。しかし良く耳をそばだてていると、なんとなく発音の雰囲気が日本語に似ているような気がする、、、

この直感はある程度正しいかも知れないと、現地の中国人と話して分かった。実は温州を初め浙江省の沿岸部は、「倭寇」との関係が歴史上非常に密接な場所。倭寇とは、昔日本史の教科書で習った通り、13世紀から16世紀にかけて朝鮮半島や中国沿岸部を暴れまわった日本の海賊のこと。

海賊というと、カリブの海賊のような武力による徹底的な略奪を想像してしまうが、実際にはヤクザのビジネスのような安定した時期も、倭寇の場合は長い。特に16世紀の後記倭寇と呼ばれる時期は、正式な日中貿易が途絶したため、むしろ密貿易業者として倭寇は大きく事業を拡大したようだ。

また日本を意味する「倭」といいながら、実態は中国人や韓国人も多く含まれていたようで、なにしろ海賊なので実態把握は難しいが、とにかく海賊の被害者だったのか、海賊自身だったのかは別として、温州は歴史上、日本との関わりが非常に強い地域である。海賊仲間同士で国を超えた交流もあったであろうし、中には日中で結婚した人もいたかも知れない。いま手元に証拠がある訳ではないが、日本との海洋貿易の長い歴史が、温州語と日本語の発音を似させている要因になっているとしても不思議ではない。

温州は市中心部の人口が約150万人ほどの中規模の街であり、周辺地域を含めると約900万人が住んでいる。例えば千葉県は全県民を合計しても約600万人なので、この人口だけを聞くと、もの凄い巨大な街を想像してしまうが、実は中国では500万人を超える街というのが数えきれないほど存在する。恐らく500万人以上の街をリストにして列挙しても、一般的な日本人だと半分も名前を知らないのではないかと思う、それぐらいスケールが大きい国なのだと、改めて実感する。

なぜ温州に注目し、上海から片道500キロの距離を超えて温州を訪れたのか、、、それはこの街が中国の将来を予測する上で、極めて重要な要素を合わせ持った街だからである。


以下、「ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (2)」へ続く。

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