ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

リアル・チャイナとジオポリティクス(10)

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通常、国際交流活動というと、「みんなと仲良くなって平和な世界を作りましょう」とニュアンスが強い。

これは世界が理想状態にあり、性善説を前提にしたものと思います。理想の世界ならば、警察はいらないし、アメリカ軍はあんなに大量破壊兵器を持つ必要はない。アメリカや中国という大国を相手にする場合、「みんなと仲良く」なろうとすることは、必ずしも戦略的な観点で適切ではないと感じています。

日本政府はこれまで中国に対して、巨額の政府開発援助(ODA)を行ってきましたが、みんなに分配する「無差別的な友好援助」は、結局誰にとっても特別感がなく、信頼に足る強力な日本サポーターを増やす観点では効果的ではなかったことを物語っている気がしています。

ロスト・ヒストリーを取り戻せ 」の投稿でご紹介したように、中国の経済発展に対する日本の貢献を敢えてもう一度強調せざるを得ないほど、中国側がピンと来ていない現状はとても残念に感じています。もう少しメリハリをつけて、選択的に日本サポーターを増やす必要があります。


これまでエピソードを多く引用しながら、現場のニュアンスを伝えられるよう努めてきましたが、このブログをご覧頂いた方からご質問頂いた「現在の状況下で、日本企業にとっての中国ビジネスの成功要因はなにか?」に対する、筆者のシンプルな仮説は、「国際感覚があり、日本との協力関係を本音で志向する中国人を全力でサポートする」ということに尽きます。



彼らが中国国内でオピニオン・リーダーとして発言力を持てば、一般の中国国民の日本への印象も確実に変化するはず。彼らが日本との関係を通じてメリットを享受でき、また、いざという時に信念を持って日本との関係に尽力して貰えるよう、あるいは中国政府のスタンスを眺めて日和見的などっちつかずのスタンスにならないようなコミットメントを引き出せるような、最大限のサポートをしていくことが重要だと考えています。

「国際感覚があり、日本との協力関係を本音で志向する」という観点で、中国の民営企業の起業家や実業家は、最も可能性を感じる。「ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (8)」でご紹介した通り、中国が共産主義の国になる前にも、上海や温州を中心とした地域の実業家と日本は、中国の近代化において協力してきた歴史もあります。

「中国」と一括りにして、その是非を議論するというよりは、国内の人間模様や政治力学を見極めながら、選択的にパートナーを選ぶ、特に自由な気風で、マーケットベースのビジネスに取り組んでいる中国のニューリーダー達との関係構築が突破口になるはず。日本で言えば、ソフトバンクの孫正義社長や、楽天の三木谷会長、ローソンの新浪社長のようなイメージ。柔軟な発想でビジネスで成功を収め、そして政治的な発言力も次第に出てきている。(中国でも成功した実業家が、共産党の中で高い地位まで昇進するケースが増えている。)


こうしたネットワークが、日本にとってはジオポリティクス情勢判断のための情報ソースの機能を果たし、有事やトラブル発生の際に資産保全やダメージコントロールしていく際に現地で信頼できる人脈となっていくと考えています。


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