ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

早稲田大学に見る日本の未来(3)

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このテーマ3回目、最後の投稿は、「create something new」について。

早稲田大学のイベントでも、繰り返し、事業でも商品でも研究でも、新しいことに挑戦することの重要性を話しました。成熟社会を迎えた日本において、「新しいことへの挑戦」は特に重要です。会の中では、やや抽象的に言い過ぎたので、今回の投稿で補足したいと思います。


ハーバードでも世界銀行や、マッキンゼー、ゴールドマンサックスなど錚々たる大組織を飛び出して、自分にしかできない事業や商品開発に情熱をかける同級生を目の当たりにしてきました。彼らは毎日自分のプロジェクトを語り、日常的にパワーポイントやpreziをいじりながらプレゼンに備えている。マネタイズだけが目的ではない、少人数のハンドメイドから始めて、世界を変えるインパクトを生み出すことが目的です。

日本人がガラパゴス携帯を放り投げてiPhoneに飛びついたように、世界一のクオリティの商品やサービスを作り出せば、対象は国内市場にとどまらず、世界市場を目指すことができる大きなチャンスがある時代になっている。彼らの作品は生活スタイルを変え、歴史を変え、価値観を変えるインパクトがある。

アメリカの求心力の源泉は、アイビーリーグ、シンクタンクや研究所、シリコンバレーウォール街、ハリウッドなど「世界最先端を学ぶ」場所が多く所在していることです。一方で、世界最大のマーケットは日本、中国あるいは東南アジアなどのアジア地域に集中している。筆者の考える「海外に出て新しいことを始める」は、「欧米で学び、アジア起点に世界シェアを取る戦略」の更なる強化です。


世界一を目指す分野は、ITやバイオなどのハイテク分野が分かりやすいですが、それに限らないと思います。たとえば筆者の身近なハーバードの卒業生には、低所得者向け信用リスク管理システムに心理学を導入したEFL(Entreprener Finance Labo)を設立したBailey Klingerや、世銀を辞めて「途上国の農家向けのスマホ情報サービス」を開発しているJohn Ikedaや、「コミュニティ・オーガナイジング」の仕組みをアジアで発展させることに挑戦している鎌田さんもいます。


日本の優位性を最大限追求できると、筆者が個人的に考えている分野は、このブログでも数多く投稿してきた「ビジネスとジオポリティクス分野」です。

なぜ筆者がこの分野に強い関心を持って、人生を賭けているかといえば、非常にシンプルですが、「日本が世界一になれる可能性がある分野」であるからです。こういったチャンスは数少ないのですが、欧米人もアジア人も、金を払ってでも、行列を作ってでも、得たいものを日本の立場で提供できる可能性があります。

アジアの市場は世界最大であり、アメリカや欧州の企業にとって最も魅力のある市場です。ただし、政治経済のマクロリスクが高く、またその背景となっているアジア的文化や歴史は、欧米人の熟知する分野ではない。一方で、アジアの競合として、最も人材を抱えているのは中国ですが、政府の情報コントロールが厳しく、日本と比べると入手できる情報の量と質が大きく劣後しています。

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (3) リンク参照」でご紹介した通り、ハーバード研究員というレベルでは、この仮説は検証されています。普通に考えればスルーされてしまうはずの「日本」であることが、逆にメリットになっています。

筆者の課題は、このコンセプトをどういった具体的なビジネスモデルに落として収益化するか、継続発展的なモデルとするか、を考えることです。つまり、コンサルティング事業なのか、投資アドバイザリー事業なのか、あるいはまったく異なるアプローチ、たとえばメディア事業なのか、、、この具体化に毎日頭を悩ませながら試行錯誤を繰り返しています。


日本経済が高度成長していた時代は、「欧米で学び、日本で成功する」というパターンが、金融やコンサルなど多くの分野で一般化してきたキャリアだと思います。多くの日本人が、アメリカ帰りのノウハウで日本でのマネタイズに成功しました。ただ長期的には日本の国内市場に大きい成長は見込めない以上、このパターンは先細りかも知れません。

どうすれば日本だけでなく、巨大なアジア市場で成功できるか、あるいはそれを起点に逆に欧米での競争に勝てるかを考えたいところ。その鍵は「日本だからこそ世界一になれる」、という分野を見つけて根気良く育てていくことではないかと考えています。

可能性のある分野は、ひとそれぞれいろいろな見方があると思います。専門も違えば、見えるチャンスも違う。いずれにしても一度「海外に挑戦」しないことには、インスピレーションも沸きません。仕事でも留学でも海外に出て、誰もが思いつかなかった新しい価値を生み出すこと。海外への挑戦を単なる「箔を付ける」に終わらせないよう、本当の勝負は海外を経験した後にこそ待っていると実感しています。


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