ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

ハーバード大学は巨大投資ファンド(5)

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最近、日本独自の国防力についての議論が、活発に行われている。これまで日本にとってのセコムとして、呼べばすぐに来てくれたアメリカ、あるいは24時間、門の前で守衛をしてくれていた(かも知れない)アメリカ。

そのアメリカの国家戦略に変化が生じていることは、以前のブログ「ハーバードで語るアメリカの東アジア戦略」などでもご紹介させて頂いた。今でも来てくれるかも知れないが、相当イヤイヤ感が溢れているし、「そんな余裕はない!」と、ある日逆ギレされて来てくれなくなるかも知れないことは、誰の目にも明らかではないかと思う。独自国防力の議論は、至極当然のことと感じている。


筆者の問題意識は、特に「日本独自の投資力」についての議論が抜け落ちていることである。


ハーバードが巨額の大学基金で投資してうまく行っているからといっても、自分自身日本の大学で働いたことはないので、日本の大学も同じように積極運用すべきとは軽々には申し上げられない。しかし国として蓄積された資金を、海外の有望な分野に投資して、次の世代のために増やしていく必要性については、ますます切実に感じている。


二回目の投稿でご紹介した公的年金のように、日本の多くの機関投資家は「日本国債」に集中投資をしている。結果、投資リターンは非常に低い。ハーバードが資産を5倍、6倍としている中で、日本の資金はほとんど増えていないのが実情である。

あるいは、国債以外の投資においても、アメリカや欧州のアセットマネジメント会社に多額のフィーを支払っており、日々こうした手数料が国外流出しているような状況。

一方言うまでもなく、国債を一斉に売却することはできない。国家財政は増え続ける負債を国債でファイナンスしている状況であるため、日本の機関投資家が国債を売却してしまえば、日本政府の財政が破綻する危険性が高い。但し、これはアメリカも欧州も同じである。ひょっとすると政府財政は、「予算があれば使ってしまうが、ないならないで、ある程度なんとかやり繰りできる」ものなのかも知れない。



筆者自身は、投資力を増強するための最大の障害は、「世界情勢を独自に分析する能力」の欠如にあると考えている。この議論は独自の国防力の議論に繋がるものであるが、冷戦体制の中でアメリカの保護の下に置かれた期間に、独自に海外権益を開拓し、マネジメントしていくアニマル・スピリットが失われてしまったのではないかと考えている。

特に「中国」についての理解は極めて重要ではないかと考えている。最大の消費市場が勃興しつつあり、地理的、文化的な近さも、投資機会の豊富さも他の地域を圧倒している。また、リアルアセットなどの長期に渡って投資リターンが見込まれる投資対象の可能性を見極めるためにも、その最大の消費市場である中国のことは最優先に理解しておく必要がある。

こうした問題意識もあり、「ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ」でご紹介した通り、中国社会にどっぷり入り込んで、現地の状況を肌感覚で理解することを心掛けている。ハーバードも同じ視点で、中国の研究を進め、研究者をサポートし、またその研究成果を取り込むことに躍起になっている。


正直筆者の感覚では、少なくとも中国、日本、韓国の東アジアマーケットについては、潜在的には、ハーバードのような欧米プレーヤーよりも、日本に強みがあると考えている。政治対立の問題は深刻ではあるものの、これまでに紡いできた歴史の長さや、共有している文化的共通性を考えると、東アジアについては、圧倒的に日本人が有利なポジションにいる。

まずはハーバードのような有力な欧米投資家の動きから学んで行く必要はあるものの、近い将来、アメリカの投資家に「東アジアの投資は任せた」と言わせるぐらいの投資力を持っていきたい。その時は厚い手数料を取って、筆者がハーバードに収めた学費を少しでも回収したいと考えている。


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