ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

ケネディスクールで語る日本とアメリカ、東アジア情勢の歴史と未来(5)

今回最後の投稿では、ハーバードで学ぶ中で繰り返し強調された、個々人が感じる「当然持っている権利を主張する」ことと、中長期の国益は必ずしも一致しない、という点についてご紹介したいと思います。大戦末期の大本営発表のイメージが強すぎるため、かな…

ケネディスクールで語る日本とアメリカ、東アジア情勢の歴史と未来(4)

直近2013年12月に実施された調査は、日本ではあまり重視されていませんが衝撃的な内容であり、アメリカ国内政治の「変節点」を如実に表しています。ひとつは日本の外務省が行った一般のアメリカ人(1000人)を対象とした「アジアで最も重要なパートナーは?…

ケネディスクールで語る日本とアメリカ、東アジア情勢の歴史と未来(3)

「なぜ日本は勝ち目のないアメリカとの戦争に踏み切ったのか?」これは、ケネディスクールで受けた無数の質問の中でも、答えに窮する難問のひとつです。熟慮の末、筆者の至った考えは、「両国の国内政治が最大要因」というものです。戦争は外交の究極的手段…

ケネディスクールで語る日本とアメリカ、東アジア情勢の歴史と未来(2)

上の写真は、小村寿太郎が号泣したと言われるポーツマス宿泊先のホテルです。一時経営破綻し廃墟となっていましたが、現在はリノベされて高級ホテルになっています。 1905年、ポーツマス条約がアメリカで交渉されている最中、東京にエドワード・ハリマンとい…

ケネディスクールで語る日本とアメリカ、東アジア情勢の歴史と未来(1)

風雲急を告げる東アジア情勢。ゲームチェンジャーは着実に国力を強めている中国ですが、同時にアメリカが強力な発言力を持っていることも共通認識ではないかと思います。靖国神社への首相参拝について、小泉政権下では「容認」していたアメリカは、直近の安…

ハーバード大学は巨大投資ファンド(5)

最近、日本独自の国防力についての議論が、活発に行われている。これまで日本にとってのセコムとして、呼べばすぐに来てくれたアメリカ、あるいは24時間、門の前で守衛をしてくれていた(かも知れない)アメリカ。 そのアメリカの国家戦略に変化が生じている…

ハーバード大学は巨大投資ファンド(4)

続いて、ハーバードは「大学」として、どういった体制で、どういった対象に投資を行っているのかについてご紹介したい。最大の特色は、「ハイブリッド・モデル(リンク先ご参照)」と呼ばれる体制である。ハイブリッドとはハイブリッドカーが、ガソリンと自…

ハーバード大学は巨大投資ファンド(3)

ハーバード大学=日本の大学+三菱商事筆者がこう表現すると、「ハーバードが三菱商事??」と、違和感を持たれる方もいらっしゃるかも知れない。三菱商事は教育機関ではなく、総合商社である、と。しかし、詳細にハーバードのことを調べていった結果、筆者…

ハーバード大学は巨大投資ファンド(2)

大学でありながら、ハーバードはいかにして3兆円もの資産を持つに至ったのか、週刊誌的な大学特集では見えてこない「巨大投資ファンド ハーバード」のコア部分について、更にご紹介させて頂きたい。ハーバードの資金運用の特色は一言で、「グローバル分散投…

ハーバード大学は巨大投資ファンド(1)

ハーバード大学は一般に、日本の大学同様に研究と教育に取り組む機関であると理解されている。但し、決定的に異なる機能を持っていることは、余り知られていない。ハーバード大学は、アメリカでも有数の投資ファンドの機能を持っている。日本がアメリカから…

早稲田大学に見る日本の未来(3)

このテーマ3回目、最後の投稿は、「create something new」について。早稲田大学のイベントでも、繰り返し、事業でも商品でも研究でも、新しいことに挑戦することの重要性を話しました。成熟社会を迎えた日本において、「新しいことへの挑戦」は特に重要です…

早稲田大学に見る日本の未来(2)

居並ぶ40~50人の早稲田の大学生。真剣な眼差し。依頼主K君から「おまえの生き様を語ってくれ」と言われているので、完全白紙のキャンバス状態、、、完全フリーな反面、テーマが決まっている中で原稿棒読みするよりも、遥かにハードル高く感じます。どうして…

早稲田大学に見る日本の未来(1)

大学時代からの盟友で、現在人材コンサルタントとして、企業の採用活動や大学のキャリア教育の最前線で活躍しているK君から声を掛けられて、早稲田大学の大学生と語る機会を得ました。K君は大学生の頃から、10数年来同じテーマを追い掛け続け、今では業界で…

リアル・チャイナとジオポリティクス(10)

筆者がこれまで経験してきた国際交流のキャッチフレーズは、言うなれば「みんなと仲良くなって平和な世界を作りましょう」であった。これは世界が理想状態にあり、性善説を前提にしたものだと思う。 しかし理想の世界ならば、警察はいらないし、アメリカ軍は…

リアル・チャイナとジオポリティクス(9)

筆者が体験したもう一つの中国の側面、「人民日報や中央電子台を信頼する一般庶民」もご紹介したい。人民日報(新聞社)や中央電子台(テレビ局)とは、日本でいえばNHKをより国営放送にしたような新聞とテレビである。厳しい政府の検閲の結果、流されている…

リアル・チャイナとジオポリティクス(8)

以下、「リアル・チャイナとジオポリティクス(9)」へ続く。> このブログの記事一覧へリンク

リアル・チャイナとジオポリティクス(7)

以下、「リアル・チャイナとジオポリティクス(8)」へ続く。> このブログの記事一覧へリンク

リアル・チャイナとジオポリティクス(6)

筆者は淡々と孫文のプレゼンを進めていった。孫文がとても日本びいきであったこと、孫文には日本人の妻がいたこと、またそもそも中国の近代化において、政治、社会、経済、革命、共和国、民主主義や共産主義など日本から逆輸入された多くの漢字が使用され、…

リアル・チャイナとジオポリティクス(5)

「実は日本人の〇〇から、今日はひとつ発表がある、みんなに聞いて欲しい。」ターンテーブルを取り囲む中国人が、一斉に筆者に振り返った。事前の前振りゼロで、文字通り凍り付いた筆者は、「え?なんのことでしたっけ?」と高官に尋ねると、「いつも話して…

リアル・チャイナとジオポリティクス(4)

ボストンの冬はとにかく降雪量が多かった。ただ「除雪のインフラ」も素晴らしく、夜中に大量に降った雪も、早朝に除雪車が主要な道路を除雪してくれるため、通学時間には自転車で通うことができた。それでも氷点下10度前後の日の自転車通学は、悪夢のように…

リアル・チャイナとジオポリティクス(3)

ボストンの夏は緑で埋め尽くされ、太陽に照らされたレンガの建物とマッチして、言葉で表現できないほどの素晴らしい風景となる。ただしボストンの秋は短い。11月には雪が降り始め、12月には氷点下が当たり前になっていった。 筆者が滞在していた際のボストン…

リアル・チャイナとジオポリティクス(2)

まずいくつか自分自身が体験したエピソードをご紹介します。2012年8月、筆者はハーバードにて中国に関心を持つ学生(中国人、日本人、アメリカ人など)を集めた勉強会の企画を進めていた。自分以外に中国人の女性幹事を立てて、それなりに人数が集まりそうな…

リアル・チャイナとジオポリティクス(1)

純粋ドメスティックが考えるグローバル人材(6)

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (8)

上の写真にある通り、中国で広く普及している原付バイクに乗る人は、ほとんどヘルメットを被っていない。おそらく9割以上の人が、ノーヘルでバイクに乗っている。 「なぜヘルメットを被らないのですか?危ないと思います」と尋ねると、「だって面倒くさいし…

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (7)

上の写真は、筆者が大好きな「揚州チャーハン」と呼ばれる上海周辺で好んで食べられているチャーハン。黒胡椒のシンプルな味で、悠久の歴史の中で結局長く愛される食事と言うのは、シンプルに美味しいものであると実感する。前述の通り、中国金融システムは…

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (6)

アングラ金融に加えたもう一つの中国金融システムの問題点は、「理財商品」と呼ばれる銀行の窓口で販売される高利回りの預金性商品。むしろメディアでは、こちらの理財商品の方がシャドーバンキングの震源地として報道されることが多い。時はさかのぼり、真…

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (5)

ナニワ金融道の世界。筆者が中国のアンダーグラウンド金融を知れば知るほど、その実態が昔愛読したナニワ金融道の世界に酷似していることに気が付く。アングラなだけに正確な統計はないが、多くの専門家は中国の融資総額の30%前後は、当局が把握していない違…

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (4)

温州は海沿いの街であり、名産料理は海鮮(シーフード)。地元の名士に紹介して貰った、「安くてうまい」海鮮料理屋で夕食を取ることにした。確かに安いが、これぞ中国という風情の店。イケスに入った魚介類を選ぶと、店員がその場で調理して持って来てくれ…

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (3)

温州はチャンスと自由があるポジティブな面を持つと共に、いま中国が抱えるネガティブな面も同時に合わせ持っている。と、その話に入る前に、そもそもなぜ筆者がハーバードの研究員として、中国に来ることになったかの話をご紹介したい。 「中国という魔法の…

ハーバード研究員が見たリアル・チャイナ (2)

倭寇の歴史も大きく影響しているはずと推測できるが、温州は中国のユダヤ人と通称される「温州商人」の出身地である。実は日本を初め外国に来ている中国人は、その非常に多くが、温州を初めとして上海から南に1000キロほどの沿岸部(浙江省、福建省、広東省…