ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

東京オリンピック2020で、日経平均3万円?

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2020年東京オリンピック開催決定を経て、日本株を買う動きが出てきている。筆者が見た中で最も勇ましい解説記事は、日経新聞電子版に9月4日に掲載された「五輪招致成功で日経平均3万円の可能性」という記事である。(全文閲覧には会員登録必要)タイトルから受ける印象は衝撃的といえる。日経平均3万円超えとは、バブルの頂点に達した1989年にほんの数ヶ月だけ実現した記録的な高値である。

 

実は記事内容をよく読むと、日経平均3万円の可能性は実はそんなに高くないことが分析されており、「最低の目標として日経平均2万円超え」するぐらいには、日本企業が収益改善して欲しい、とされている。タイトルは扇動的であるものの、良く読むと本文は控え目というパターンではある。

こういった記事のタイトルだけを読んで、「日経平均3万円!」と早合点する投資家は多くはないと信じたいが、一方で株式相場はほとんどのケース理性的ではないため、ムードに流されたバブル相場が作られる危険性もあると感じている。

個人的にはひとりの日本人として、オリンピック開催を契機に日本が自信を取り戻せればと切に願っている。特に日本人のプライドである経済分野の再興は、ビジネス出身者としてもなんとしても実現したい。一方で、根拠なき熱狂は、いずれ激しい失望売りを生む。1989年のバブル相場も、過剰な金融緩和と、土地神話によって生み出され、その後の20年以上に渡り日本人にとっての心的外傷となった。

 

オリンピック招致委員会がまとめた東京オリンピック2020の経済効果は、メディアでも報道されている通り約3兆円とされている。前回のロンドン五輪では、円換算で約2.5兆円の経済効果が生み出されたと試算されているとのことなので、3兆円の試算は誇張された数字ではなさそうである。

但し、3兆円という数字は、それだけで聞けば巨額の数字ではあるが、受ける印象を鵜呑みにすることは危険である。まず経済効果の期間は7年間に渡り発生する合計額とされており、1年に換算すれば約4,000億円となる。日本のGDPは約500兆円なので、4,000億円は全体にとっては年率僅か0.1%未満の増加幅という計算となる。仮に目論見通りの効果が満額実現したとしても、日本経済をダイナミックに復活させる規模とは言えないだろう。

 

また直近の報道では、福島原発の1号機から6号機の廃炉費用に2兆円が必要であり、東電自己負担だけでなく税金投入も可能性として出てきている。今後の推移は分からないが、結果的にはオリンピックの経済効果を超える廃炉費用、あるいは原発停止による負の経済効果が発生する可能性も充分あるだろう。

 

加えて、過去の事例を持って株高を正当化する動きもあるが、2000年以降の4回のオリンピックにおいて、開催決定時の株価と、実際の開催時の開催国の株価指数を比較してみたところ、株価が上がったのは2000年シドニー五輪(上昇率約50%)と、2004年アテネ五輪(同40%)の2回、残り2回2008年北京五輪と、2010年ロンドン五輪はほぼ同水準である。ちなみに株が上がったアテネ五輪開催国のギリシアは、その後財政破綻しており、参考になるとは思えない。「オリンピック=経済復興=株高」という連想は、楽観論に過ぎるのではないだろうか。

 

最後に。株バブルではない、真の意味で日本経済が復活するような7年間にしたい。「ALWAYS三丁目の夕日」の時代を見て、ハングリー精神で負けてないと思えるまで、向上心を高めていきたい。