ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

尖閣問題でアメリカの姿勢が中途半端な理由

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尖閣問題で、アメリカの姿勢が煮え切らないと感じている方は多いのではないだろうか。日本政府が尖閣は日本領だと主張している以上、同盟国として日本に同調して「尖閣は日本領だ」と言って然るべきと感じるところ、アメリカ政府は領土の帰属は判断を保留にし、「日米安保条約の義務は履行する」と杓子定規な印象の受け答えを貫いている。この中途半端に見えるスタンスの背景には、いくつかの複合的要因が影響していると考えられる。

 

まず「ハーバードで語るアメリカの東アジア戦略(1)~(3) 」でご紹介した通り、アメリカ自身が日本との関係、言い換えると冷戦後の東アジア戦略について「迷い」があると言える。最大の決定要因は、日本との関係ではなく、むしろ中国とどこまで協調関係が築けるか否かであり、中国との良好な関係を作れるとアメリカが判断すれば、尖閣問題について日本に対するサポートは弱くならざるを得ない。

 

次にアメリカ国内の世論として、他国の紛争に干渉すべきではないという意見が強くなっていることが挙げられる。こうした世論形成の最大の理由は、イラク戦争への反省と批判である。アメリカ人の死者を出してまで戦争したにも関わらず、国威高揚に繋がるどころか「独善的国家」として国際的な評価を失墜させた苦い経験があるため、遠く離れた東アジアの紛争に極力関わりたくない、という政策スタンスが生まれている。

 

最後のポイント、これが最も重要であると感じているが、中途半端なスタンスを貫くことで、日本のアメリカに対する忠誠心を強化できることではないかと考えている。日本としては強固な日米同盟が国防上の必須条件となっており、アメリカのサポートは何としても確保しなければならない生命線となっている。

イギリス議会やアメリカ議会ですら反対したシリアへの軍事介入について、当事国世論の結論すら待たずに日本が支持を表明したことは、日本がアメリカにノーと言えない状況に置かれている可能性を示唆している。この見方が正しいとすれば、中途半端なスタンスを通じて、キャスティングボードを握ることで、交渉力を高めていくという作戦は、今のところ奏功していると感じる。