ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

ハーバードの最強語学プログラム (3)

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若き大学生でごった返す語学棟に、突然のシニア学生の来訪、明らかに戸惑っている感が伝わってくるイケメンとビルゲイツ。もう一度「ニーハオ」と言ってみた。今度はイケメンが「ニーハオ」と答えてきた。なんともぎこちない。やはりケネディスクールのプログラムディレクターの助言は、正しかったのだろうか、なんともいえないこの「浮いた感じ」。

とりあえずビルゲイツの隣に座って、話掛けてみることにした。中国語で話すも、あまり乗ってこないので、禁じ手ではあるが英語に切り替えて話掛けてみた。どうもビルゲイツは歴史専攻らしい。コンピューター専攻だと信じていただけに、ちょっと残念だ。ほとんど筆者と目を合わさずに、ボソボソと中国の歴史を研究している、今年の夏は2か月ほど北京に行って中国語研修をしていたことを教えてくれた。

 

そうこうしている内に、若い女子大学生のグループが2組ほど入ってきた。1組は見たところアジア系の一群で、もう1組は白人と黒人が混ざったアメリカ人の一群。やはり万国共通、外国語を勉強するのは女子が多いのだろうか。見たところ女子学生は8名ほどいる一方、男子学生はビルゲイツとイケメンと筆者だけである、などと考えていたら、例の黒竜江省のインストラクターが入室してきて授業が始まった。

インストラクターは授業の冒頭、もの凄い早口で授業参加に際しての重要事項を説明していた。その余りの速さに、筆者は何を言っているのか、ほとんど聞き取れなかったのだが、ビルゲイツやイケメン、あるいは他の女子学生は理解しているようでウンウンとうなづいている。筆者も負けじとウンウンとうなづいておいた。だが、やはりこれは相当場違いなところに迷い込んでしまった、改めて痛感した。

 

ハーバードの中国語の授業では、前述のインストラクターに加えて、チューターと呼ばれるもう一人の指導教官がついている。授業はインストラクターが教え、授業とは別のチュートリアルという復習目的の時間は、チューターが教えてくれるシステムになっている。上級ビジネス中国語のチューターは、台湾出身の筆者よりも年齢が若い男性であった。

高速で話される重要事項説明の中で、筆者でも聞き取れた超重要事項があった。それは「授業は平日毎日ある」ということだった。

ケネディスクールやビジネススクールでは、1単位を取得するための授業時間は、1週間に80分×2回である。場合によっては2時間1回という授業もあるぐらいで、1単位のための所要時間は週2~3時間というのが相場だ。語学の授業は毎日1時間×5回、合計5時間の授業時間を意味している。

加えて、筆者は前述の通り、片道20分掛けてケネディスクール方面から歩いてこなければならない。やはりどう考えても心が折れそうだ。いや、もうその時点で心が折れていたかも知れない。

 

上級ビジネス中国語の授業は、入念な予習をしてきていることを前提に進められる。授業開始の5分間は、教科書の内容を踏まえて、インストラクターが読み上げる中国語をディクテーションすることから始まる。

一応2、3回読んでくれるものの、なにしろ内容が難しいため、聞き取ることがとても難しい。隣を見るとビルゲイツが苦労しながら漢字を書いている。英語ベラベラの白人や黒人が、漢字を必死に書いている姿は、なんとも不思議な気分になる。というか、アメリカ人も外国語を学ぶ苦労をしているところを見ると、自分が英語で苦労した経験がよみがえり、苦労を共有しているような気がして、なんだか嬉しい気分になる。

ディクテーションの小テストが終わると、そこからはインストラクターのマシンガントークが始まる。いや、正確に言うと、マシンガン質問が始まる。「主人公は健康器具が中国で売れるかどうかわからないと言っていたと思うけど、その理由はなんだっけ?」、「えーじゃあ、あなた」と質問内容を言った上で、誰か特定の学生を指して答えさせる。

学生は即座に答え、その答えが若干ずれた内容だと、インストラクターから追加の質問が降ってくる。分からないと沈黙していると、なんだかもの凄いプレッシャーを感じ、予習が不十分な自分を恥じる気持ちが湧き上がってくる。

このプレッシャーを生み出す雰囲気作りは非常に巧く作りこまれた環境だと思う。いつ自分が指されるかわからない状態なので、一秒たりとも気を抜くことができない。必然的にかなり前のめりに授業に参加せざるを得なくなる仕組みである。

 

一回り年下の大学生の前(しかも女子学生多数)で、大恥をかく数カ月、という三十路を超えたシニア学生にとって、最悪の事態が現実のものとなってしまったのだ。このアゲインストの状況下、日本人としてプライドを示すことはできるのか?! 

  
以下、 「ハーバードの最強語学プログラム (4)」へ続く。

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