ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

ハーバード大学は巨大投資ファンド(3)

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        ハーバード大学=日本の大学+三菱商事


筆者がこう表現すると、「ハーバードが三菱商事??」と、違和感を持たれる方もいらっしゃるかも知れない。三菱商事は教育機関ではなく、総合商社である、と。しかし、詳細にハーバードのことを調べていった結果、筆者が辿り着いたイメージは、ハーバード大学は、日本の高等教育機関に総合商社をプラスしたような存在である。


前回、説明を保留にしていたハーバード大学基金の投資先「その他 約70%」の中身は、以下の通りとなっている。

1. 新興国株式+プライベートエクイティ+ヘッジファンド   約40%
2. リアルアセット投資(不動産+天然資源+商品先物など   約30%


単純化すると、新興国や非上場株式などが40%、天然資源などのリアルアセット投資が30%である。これはまさに21世紀に入ってから高収益を出している総合商社の事業ポートフォリオに類似している。

伝統的に貿易の仲介を主軸にしてきた総合商社は、20世紀末に商社不要論に直面した段階で、高収益が実現できる新興国や非上場株式、あるいは天然資源に対する「事業投資」に経営の舵を切り、その投資収益によって空前の利益を達成することができた。現在の総合商社各社の利益の大半は、こうした新興国、非上場株式、天然資源への事業投資から生み出されている。

投資の規模も、ハーバードと三菱商事(あるいは三井物産)は非常に類似している。ハーバードは3兆円の大学基金を使って、年間3500~4000億円程度の投資利益を出しているが、三菱商事も同程度の株主資本を使って、ほぼ同水準の投資利益を出している。

従って、ハーバード「大学」と、大学を語ってはいるものの、その本質は日本人がイメージする「純然たる大学」とはかなり異なる存在であり、日本で同じ機関を創設するとするならば、それは日本の大学を単純に高度化させた状態というだけではなく、全く性格の異なる、いわば「東大と三菱商事を合併したような状態」であるというのが、本稿の伝えたい内容である。


総合商社は、このブログでも以前「三井物産筆頭常務 安川雄之助の生涯」でご紹介した通り、明治維新の頃からあらゆる分野に進出し、貿易立国日本の発展を支えてきた存在であり、情報ハブとしての役割を担ってきたことが、現在の投資会社化した経営を支えている。

ハーバード大学も同様に、長い期間に渡って蓄積してきた情報ハブとしての機能を最大限生かして、こうした新興国、非上場株式や、天然資源投資の世界で、強力な投資会社として収益を生み出しているのである。

留学を志した頃の筆者のハーバード大学に対するイメージは、「アメリカの高等教育機関」に過ぎなかった。日本の大学で行われている教育を、英語で、かつ更に高度な内容で行っているのだろう、という漠然としたイメージであった。このイメージは間違ってはいなかったものの、振り返ってみて、ハーバードの半分の側面しか見えていなかったと感じている。

もう半分は、筆者自身が慣れ親しんでいる総合商社のビジネスモデルに酷似していることに気が付いた時に、目からウロコが落ちる衝撃を感じた。これはハーバードだけではなく、アメリカの主要大学は全て同様に、巨大な大学基金を持ち、総合商社と同様の投資活動を行っている。アメリカの大学は、そもそもビジネスモデルが根底から日本の大学とは異なっている、と感じた。


では具体的にハーバードは、どういった対象に投資を行い収益を上げているのか。このシリーズ冒頭に申し上げた、「日本がアメリカから学ぶべきノウハウ」はどういったものなのかについて、次回以降の投稿にてご説明申し上げたい。


以下、「ハーバード大学は巨大投資ファンド(4)」へ続く。


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