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ハーバード留学/研究員記録

純国産(純ドメ)の日本男児。 総合商社でアメリカ、中国の投資の仕事をしてきた後、 ビジネスと政治経済の融合を目指してハーバード大学ケネディスクール(Harvard Kennedy School)に留学。 修士課程を卒業した後、現在は同大学の研究員として中国にて現地調査中。 アメリカや中国で感じることについて書いていきます。

ハーバード大学は巨大投資ファンド(1)

海外ビジネス

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ハーバード大学は一般に、日本の大学同様に研究と教育に取り組む機関であると理解されている。但し、決定的に異なる機能を持っていることは、余り知られていない。ハーバード大学は、アメリカでも有数の投資ファンドの機能を持っている。

日本がアメリカから学ぶべきノウハウはここにある。


アメリカの私立大学は、どこの大学も「大学基金」を持っている。これは授業料収入や、例えばケーススタディなどの教材の売上も含まれているものの、最も強力な資金源は「寄付金」と、その「運用益」である。ハーバード大学基金は、約3兆円の資金規模を有しており、約2兆円規模有しているイェール大学基金と共に、大学基金の世界でのリーダーの役割を果たしている。


3兆円と言っても、投資の仕事をしていない限りは、即座に規模感がイメージしづらいと思うものの、例えば日本の大学、慶応大学基金が約400億円、早稲田大学が約300億円、東大が約100億円と言われているので、日本の最も大きい大学基金と比較しても100倍ぐらい大きい資金を有していることになる。

このパワーオブマネーが、ハーバードの高水準の研究、教育活動を支える不可欠なリソースとなっており、また政府からの補助金を期待せざるを得ない日本の大学と比較して、圧倒的な自由度と独立性を確保する手段になっている。

実はハーバードの大学基金は、20年前の1990年頃には約5000億円程度の規模であったと言われている。当時まだ日本の大学基金とのギャップは10倍強。つまり投資のリスクを取って、20年掛けて基金の規模を6倍にしたことになる。20年で6倍というのは、複利計算の場合は、年率10%前後の投資リターン。

特に2000年代に入ってからは、積極的な投資スタンスに切り替え、更にパフォーマンスを向上している。リーマンショック時の一時的な投資損失は発生したものの、現在においても毎日ハーバードの大学基金は着実に増え続けている。


分かり易さを最優先に単純化してご紹介すると、巨額の資金を増やすためには、まず考えるべきは、現金や銀行預金のままにしておくのではなく、債券や株式を購入して、投資リターンを出していくことになる。アメリカや日本に限らず、あらゆる投資家は、まさに国債や社債、あるいは株式などの投資信託などを購入することで投資リターンを出すために日々努力をしている。

一方で、ハーバード大学ほどに高いパフォーマンスを維持し、資金規模を着実に増やしている投資家は非常に少ない。例えば、日本の国債を買ったとしても、あるいは日経平均に投資をしたとしても、20年掛けても到底年率10%の投資リターンは達成できない。

そもそもご存知の通り、日経平均はアベノミクス後(14,000円前後)であっても、90年代前半の水準と同等か、むしろ下落しているので、日経平均に投資だけしていたとすれば、20年掛けても全く資金が増えないか、むしろ減っていたことになる。

オーソドックスな債券と株式の運用だけでは、ハーバード大学の成長に追いつくことは決してできない。そればかりか、特別な仕組み、特別な人材を揃えない限りは、ギャップはどんどん広がっていく。



日本のメディアにおける「国内外の大学比較」のような情報には、日本の大学と、アメリカなどの海外の大学を比較して、研究面のギャップ、教育面のギャップについて分析しているものは多いものの、その両者の質を確保する為に決定的に重要な資金運用面でのギャップについて言及しているものは、ほとんど存在しない。

しかし良質の研究や、良質の教育には非常にカネがかかる。3兆円のカネを持つ人々と、300億円のカネしか持たない人々は、できることは自ずと全く異なるものになるはずである。どのようにハーバード大学やイェール大学が、資金を運用し、そのパワーオブマネーによって、大学の影響力を最大化しているかを知る必要がある。


このシリーズでは、筆者自身のヘッジファンドや、ファイナンスビジネスの経験、留学期間中に得られた情報などをもとに、巨大投資ファンドとしてのハーバード大学について、できる限りファイナンスの専門知識を必要としない形で、ご紹介していきたいと思う。


以下、「ハーバード大学は巨大投資ファンド(2)」へ続く。

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